超絶技巧の職人技炸裂!泡坂妻夫『喜劇悲喜劇』~丹念に織り上げられた名作ミステリ~
私の書棚からまた面白そうな本を見つけてきた、黒猫こまち。


記事後半には、楽しい言葉遊びとこまち新作イラストがありますよ!
ショウボートを舞台に
奇術趣味溢れる展開
奇術趣味溢れる展開
『喜劇悲喜劇』泡坂妻夫・著
~あらすじ~
~あらすじ~
人がいい分気が弱く、酒に溺れて鳴かず飛ばずのプロマジシャン・楓七郎。
ある日昔なじみのマネージャーから、シアター豪華客船「ウコン号」処女航海の仕事を紹介される。
ショウ初日を前に謎の失踪を遂げた外国人マジシャンの、急きょ代役。
ショウ初日を前に謎の失踪を遂げた外国人マジシャンの、急きょ代役。
七郎の芸を慕うマジシャン志望の娘・森まりもを新アシスタントに、華やかな舞台での再起を期して船上の人となった酔いどれ奇術師。
いずれもひと癖ありげなほかの出演者の中には、かつて七郎の助手を務め恋人でもあった女性の姿も。
乗船前には高揚していた気持ちが落ち込むのを自覚しながら、リハーサルの舞台に立つ七郎。
客席からその出来を揶揄した道化師と諍いを起こしお払い箱寸前のところを、まりもの懇願によって救われる。
客席からその出来を揶揄した道化師と諍いを起こしお払い箱寸前のところを、まりもの懇願によって救われる。
これを機に断酒をと迫る助手の声を聞き流し、七郎が厨房でコニャックをラッパ飲みしているところへ駆けつけるまりも。
七郎が喧嘩したばかりの道化師が、自室で首を絞められ息絶えているというのだ!
それに続いて船内で起きる連続殺人、被害者にはある不思議な共通項が。
閉鎖空間で疑心暗鬼に駆られる七郎たち。次第に明らかになる、ショウのために集められた出演者たちの過去の因縁。
後半になって存在感を増す意外な探偵役が導き出す、驚天動地の真相とは?
趣向を散りばめた
見事な手織りの一品
見事な手織りの一品
☆其角の有名俳句に想を得たマジシャン作家の名短編と、”新しい言葉”を探す若者たちの一気読みエンタテイメント大作~噺家の呑気な余興でも遊んでみよう~
☆ヴィクトリア朝時代のロンドンと、現代日本を舞台に。巧緻に作られた暗号ミステリ2編ご紹介。
に続いて取り上げる、マジシャン作家・泡坂妻夫。
☆ヴィクトリア朝時代のロンドンと、現代日本を舞台に。巧緻に作られた暗号ミステリ2編ご紹介。
に続いて取り上げる、マジシャン作家・泡坂妻夫。
私はとにかく泡坂ワールドの大ファンですから、こうして折りにふれおすすめ本をご紹介。
これらに支えられた各作品は、いずれも手間ひまかけて織り上げられた絹織物のような味わい。
機会をあらためてぜひ取り上げたい『しあわせの書』など、ストーリー以外の部分で読者をあっと驚かせる超絶技巧を施したミステリもたくさんあります。
『喜劇悲喜劇』にも、作品全体を通してのある趣向が。
「きげきひきげき」というタイトルを、よーく注意して読んでみてください。
そう、この作品は数多くの「回文」に彩られているのです!
回文尽くしの上質ミステリ
本の題名だけではありません。
と、各章のタイトルも回文。
”森まりも”や”たんこぶ権太”など回文名の登場人物も出て来ますし、船の名前「ウコン号」」もそう。
とにかく全編、回文尽くし。
そして極めつけは、 物語開巻最初の文章と、 ラスト1行。
これも、実によく練られた回文になっています。
これも、実によく練られた回文になっています。
その趣向に引きずられて、肝心のストーリーがご都合主義…なんてことは天地が避けても泡坂ワールドにはあり得ません。
終盤の伝奇小説っぽい真相まで、読者の予想を裏切る展開と根底に流れるユーモアでまさに「一読巻措く能わざる」。
冒頭イラストでご紹介したのはカドカワノベルスの初版ですが、今でも電子書籍等で手に入る創元推理文庫版がおすすめ。


装丁はこちらの方がお洒落ですし、趣向を凝らした解説もついておトク!
身の周りで探す
回文のネタ
回文のネタ
お正月・枕に敷いて寝るといい初夢が見られるという、詠み人知らずの回文歌。
ほかにも昔から、数多くの「上から読んでも下から読んでも同じ」和歌や俳句が詠まれています。
自分でも頭の体操にやってみると、けっこう面白いですよ。
いきなりまとまった五七五はハードルが高いので、まず身近にある言葉をひっくり返して回文の材料にならないか試してみましょう。
たとえば、私が住んでいる東京の中野区。
おっ、いきなり使えそうだぞ。
おっ、いきなり使えそうだぞ。
「の」を折り返し点にして、「中野かな(なかのかな)」。 ここへさらに文字を足して…。
とりあえず、意味の通る文章になりました。

この記事書いているさなか、文化庁からメールが。
☆自治体対応よりひと足早く、文化庁の「職域接種」を受けてみました!~世界で一番呑気な、新型コロナワクチン体験記~で体験した、芸術文化職域接種。
ぐぇー。
ま、私が受けたのは「目視で異物がないことは確認」されているそうですし。
接種後10日近くたって何事もないので、大丈夫なんでしょう。
接種後10日近くたって何事もないので、大丈夫なんでしょう。
でもちょっと驚いたので、すぐネタにして取り返します。
はすぐ思いつきますから、前後に二文字ずつ追加。

わが家の黒猫、
突如改名?!
突如改名?!
今度は私の芸名「扇治」でやってみましょう。
「じんせ」。ここからすぐ「じんせい」と連想、足した「い」をとっかかりにしてひねってやれば…。
できたできた、いい芸名を付けてくれて師匠ありがとうございます!
調子が出てきたので、わが家の共同執筆猫の名前にも挑戦。
「ちまこ」?
今度のは、すぐに次のステップを思いつきません。
ちまこ、ちまこ…。 呪文のように唱えながら、頭をひねっていると。
今度のは、すぐに次のステップを思いつきません。
ちまこ、ちまこ…。 呪文のように唱えながら、頭をひねっていると。

「お父さんお父さん、これ見てよ」
ほう、こまちが先に回文思いついたのかい? どれどれ、見せてごらん。

これニャ!
こまちまこ
「こまち・まこ」?
なんだいこれ。ラブコメものアニメの、登場人物でいそうな名前だな。
なんだいこれ。ラブコメものアニメの、登場人物でいそうな名前だな。


えっ、ええーっ。
私たちの知らないうちに、区役所で改名手続きまでしてきたのかい?
しかも、名字まで変更してしまうとは。
夫婦ならぬ、ペット別姓。
夫婦ならぬ、ペット別姓。
う~ん、飼い犬に手を噛まれる・同居猫に改名される。
こりゃちょっと、弱ったな。
こりゃちょっと、弱ったな。
確かに詰めて呼んじゃうこともあるけど、「こまち」は家族みんなで考えた大切な名前なんだよ。
だいいち、こまちはブログやTwitterによく登場してるんだから。
ここまで書き溜めた記事や呟きを、今から全部「小町まこ」に直せって言うのかい?
ここまで書き溜めた記事や呟きを、今から全部「小町まこ」に直せって言うのかい?
それはあまりに、ご無体な。
どうか「小町まこ」が本当の名前なんて、ウソだって言っておくれ。 お願いします!

おいおい人間脅かしちゃいけない、お父さん寿命が縮んだよ。
でもよかった、新しいのが「本当の名前」なんて。 ウソだと言ってと拝む私に、答えていわく。
奇しくも、これも回文になりました。
ぐるり回ってことがおさまったところで、こまちは『喜劇悲喜劇』の続きをベッドでゆったり読むそうです。


お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
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